うつ病の傾向と症状

中高年の女性に多いうつ病

ケーススタディ1
自分は乳がんではないかと思い込み、うつ病になったHさん・60歳

■更年期障害のような症状が現れて

専業主婦のHさんは、子育ても終わったので、これからは自分の時間を楽しもうと考えていました。そんな矢先、顔がほてり、動悸やめまいが起こるようになりました。また、家族のちょっとした言葉にイライラしたり、理由もないのに急に不安に襲われたりしました。Hさんは、更年期障害かもしれないと思いましたが、病院には行きませんでした。

■乳がんなのではないかという不安が消えない

ある日、婦人科の定期検診を受けたところ、乳房にしこりのようなものがある、と言われました。精密検査を受けたところ、幸いにも異常なしと診断されましたが、Hさんは信じることができません。「自分は乳がんなのではないか」と医師に詰め寄ったのです。医師は何度も心配ないと伝えましたが、Hさんは信じません。
「自分は乳がんでもうすぐ死ぬかもしれない」と思い込んだHさんはどんどん不安になり、不眠や倦怠感にも襲われ、ついには家から出られなくなりました。

ケーススタディ2
空の巣症候群になったSさん・60歳

■子どもも自立し、第二の人生を謳歌するはずが…

Sさんは夫と一人息子の3人家族。仕事人間の夫に代わり、息子に精一杯の愛情を注いで懸命に子育てをしてきました。夫の定年と同時に息子の結婚が決まり、息子が家を出ることになったため、今後は夫婦水入らずで第二の人生を謳歌できると思っていました。
ところが、夫はSさんをほったらかしにして趣味のゴルフに没頭し、ほとんど家にいません。家にいてもすることがないSさんは、これではダメだと思い、パートに出ようと考えました。

■自分だけが取り残されたような気持ちに

夫にパートに出たいと話したところ「妻を働かせているなんて世間体が悪い」と大反対されました。息子にも相談しましたが、仕事が忙しく、あまり親身になって聞いてくれません。子どもが生きがいで、子育て一筋で頑張ってきたSさん。一人で家を切り盛りしてきたのに、なんだか自分だけが取り残されてしまったような気持ちになりました。
生きがいを失ったSさんは塞ぎ込むようになりました。家事がチグハグになったり、息子の嫁との折り合いが悪くなったりして、徐々に言動が変化していったのです。ようやくSさんの異常に気づいた夫が慌てて病院に連れて行ったところ、「空の巣症候群」と診断されました。

更年期は女性のうつ病発症のピーク

●原因

閉経を挟んだ前後10年、おおむね45歳~55歳の時期を更年期と呼びます。女性ホルモンが最も変動する更年期は、女性のうつ病の発症のピークだと言われています。
この時期は、婦人科系を始めとする病気の心配が出てくるとともに、進学や就職で子どもが巣立つ時期でもあります。そのため、身体的・精神的な不調が現れやすくなります。
先の空の巣症候群とは、子どもが自立した後、母親が心のよりどころを失い、その結果うつ病に発展してしまうことを言います。

●症状

体力的な衰えを感じるとともに、更年期障害の症状で不調が続き、言いようのない不安や空虚感を感じる人が多く見られます。次のような症状を訴える場合は注意が必要です。

  • 眠れない
  • 理由なく悲しくなる
  • 強い孤独感がある
  • 気分の落ち込みが激しい
  • 人と会うのがおっくうになる
  • 何をするにもやる気がでない
  • イライラする
  • 動悸やめまいがする
  • 食欲がなくなる

●対策

更年期は非常にストレスを受けやすい時期です。体の変化と心の状態には十分気を配り、十分な休養を心掛けてください。辛いことがあれば、一人で抱え込んで悩まず、周囲に相談することが大切です。
また、生きがいはすぐに見つけられるものではありません。人生の転機を迎える前から、家庭とは離れたところに何か生きがいとなるものを見つけておくとよいでしょう。
症状が見られたときは医療機関に相談してください。できれば家族と一緒に相談されることをおすすめします。