うつ病の傾向と症状

老人性うつ病

ケーススタディ1
妻の死と環境の変化でうつ病になったEさん・75歳

■妻の死をきっかけに、住み慣れた家を離れて

Eさんは建設会社に40年勤め、10年前に退職しました。退職後は妻と二人で旅行したり、趣味に没頭したりして、悠々自適な生活です。ところが突然、妻が心筋梗塞で他界。Eさんは、心が空っぽになったようにひどく落ち込みました。
心配した息子は同居を提案しましたが、最愛の妻と暮らした家を離れたくないとEさんは拒否。しかし、一人暮らしをさせておくのが心配だという息子の気持ちを酌んで、同居をすることにしました。

■認知症かと思ったら…

同居を始めてしばらくすると、Eさんに変化が現れます。食欲は落ち、顔色が悪くなりました。物忘れも目立つようになり、話しかけても反応がありません。穏やかな人だったのに、些細なことで怒るようにもなりました。
「もしかして認知症なのでは?」と思った息子が病院に連れていくと、老人性うつ病と診断されたのです。

ケーススタディ2
自尊心が災いしてうつ病になったYさん・65歳

■現役時代が忘れられず「俺が、俺が」と自己主張

Yさんはいわゆる一流企業で管理職を務め、無事定年を迎えました。実は、Yさんは仕切りたがる性分で、現役時代に部下を使っていたときの癖が抜け切れず、誰に対しても命令口調でした。「俺が、俺が」と自己主張が激しいため、仲間から敬遠されるようになり、次第に人との付き合いがなくなっていきました。一方、妻は趣味の茶道に生きがいを見出し、自立していました。

■別居の申し出をきっかけにうつ病を発症

誰にも相手にされず、家にいてもすることがありません。ぶらぶらするだけの毎日でした。ところが妻は、仲間と楽しそうに過ごしています。それは大いにYさんの自尊心を傷つけました。
すると、事あるごとに「誰のおかげで生きていられると思っているんだ」とか「俺が今までお前を食べさせてやった」、「俺が働いて金を出してやったから、お前は趣味ができるんだ」などと主張するようになりました。
恩着せがましい言葉を浴びせる夫に愛想を尽かした妻は、子どもたちと相談し、とうとう別居を申し出ました。すると、Yさんは無気力になり、塞ぎ込むようになったのです。

高齢者のうつ病は「生活環境の変化」が最大の原因

●原因

高齢者の場合、退職や伴侶の死、子どもの独立といった生活環境の変化が原因となってうつ病を発症すると言われています。また、老化に伴う身体的・精神的な衰えも原因となります。

●症状

高齢者の場合、次のような身体症状を訴えることが多く見られます。

  • 頭痛や吐き気がする
  • めまいがする
  • 疲れやすい
  • 眠れない
  • 食欲がない
  • 耳鳴りがする
  • 口が渇く
  • 息切れする

また、不安や焦燥感が強くなる、落ち着きがなくなる、ぼんやりすることが多くなる、といった認知症に似た症状が出ることもあります。

●対策

新しいことにチャレンジする気持ちを持ち、社会とのつながりを持つように心がけましょう。趣味を見つけ、習い事に通ったり、若い人たちと積極的に会話したりすることが大切です。また、老化に負けないよう適度に運動も行いましょう。

高齢者のうつ病は認知症に似た症状が多くあるため、加齢による認知症だと思ったら、実はうつ病だったということがよくあります。また、不安や焦燥感が強く、一人暮らしの場合は特に自殺の危険が高くなります。そのため、家族や周囲の人が、絶えず声がけするなどして社会から孤立させないよう、普段から気にかけてあげることが大切です。いつもと違う様子が気になったら、すみやかに専門機関に相談してください。