うつ基礎講座

上級 うつは治療で治せる病気

厚生労働省の調べによると、うつ病を含む精神疾患を患っている方は年々増えています。その中でもうつ病を患っている方の数は大きな比率を占め、精神疾患を患っている方のうち3割はうつ病であるとされています。いまや日本では、うつ病は誰もがかかる可能性のある病気になりました。

うつ病は軽症のうちに治そう

うつは、気付かずに放っておくとどんどん悪化していきます。うつには、無気力や睡眠不足、涙もろくなるなどの「心に現れる症状」の他に、肩こりや頭痛、めまいなど「身体に現れる症状」があります。心の症状で苦しんでいるときに身体の症状に悩まされ、さらに心の症状が悪化する……という悪循環に陥り、いつのまにか重度のうつ病になってしまうこともあります。

うつかな? と思っても、してはいけないことがある

うつ病は、いまだにメカニズムの全てが判明しているわけではない病気の1つです。なお、うつ病を患っていると思った時、とってはいけない行動が何点かあります。

暗い気分を高揚させようとして、アルコールをたくさん摂取すること
人間の脳からは、「セロトニン」という生体リズム(生活リズム)や神経内分泌物、睡眠などに関係する物質が分泌されています。アルコールはこのセロトニンを減少させ、生活リズムの乱れや睡眠不足、脳が「気分」に関係する物質を分泌するのを妨げるなど、うつ病をさらに加速させてしまう原因になります。
また、うつ症状が出ているときに深酒をすると、酩酊によって意識のストッパーが外れ、それがきっかけで自分を傷つけてしまったり、より深く思いつめてしまうこともありえます。
うつ病が疑えるときには、できるだけアルコールの摂取を控えるようにしましょう。
アミノ酸を不足させること
これもセロトニンに関係することです。セロトニンはアミノ酸を主成分としています。アミノ酸が不足するとセロトニンの分泌も少なくなってしまい、軽度のうつ病でも悪化させてしまうことがあります。
典型的なうつ病の症例に「無気力になってしまう」というものがありますが、この状態が長く続くと食生活もおろそかになりがちです。億劫でも、栄養バランスを意識した食事を摂るようにしましょう。
なお、アミノ酸は、肉類や卵、魚類など動物性のものに多く含まれます。

これらはあくまでうつ病治療の中の一説にすぎませんが、生活習慣の改善はうつ病の治療としてよく挙げられます。

うつ病の検査

これまでは自覚症状や周囲の言葉、カウンセリングなどが主な判断材料だったうつ病ですが、近年新たに検査方法が確立されました。
「光トポグラフィー検査」といって、人体に害のない光を照射し、脳(特に前頭葉)の血流の様子を可視化するというものです。
2009年に厚生労働省が「先進医療」として承認し、2012年時点で国内の13ヶ所の病院が光トポグラフィー検査を導入しています。
うつ病、双極性うつ病、統合失調症など、血流の様子にはパターンがあり、うつ病診断の正確性を高める補助的な診断方法として使われています。
光トポグラフィー検査を受けることが推奨されるのは、以下のような方です。

  • うつ病の症状に当てはまるものがあるけれど、本当に自分がうつ病かどうかわからない。
  • うつ病だと診断されて薬をもらっているけれど、長期間の投薬にも関わらず効き目を実感できない。
  • 現在受診している精神科、心療内科の医師の治療に不満や不安を覚えているので、セカンド・オピニオン(主治医以外の医師に意見を求めること)として使いたい。

自身の状態を可視化できる光トポグラフィー検査は、うつ病の治療を新たな段階へと進めたといえます。うつ病治療の新たな指針として活躍が期待されています。
自分はうつ病かもしれない、という不安を抱えている方は、一度かかりつけの医師に相談してみてはいかがでしょうか。
この他にも、以前から行われてきた心理検査(人格検査や知能検査)を行うこともあります。心理検査は病院により様々なものを導入しています。

苦しみをわかってもらうには

人が、誰とも関わらずに完全に一人で生きていくというのはとても難しいことです。家族や恋人、社会人であれば勤め先の同僚や上司、部下と一緒に過ごし、学生であればクラスメイトや担任教師などと一緒に過ごすことになります。
うつ病は、本人だけではなくそういった周囲の方々にも少なからず影響を与えます。理解しようと必死になってくれる方もいれば、うつ病を甘えだと断定してしまう方もいるでしょう。また、うつ病だと知って距離を置く方もいるかもしれません。
もし、どうしてもうつ病で苦しんでいることをわかってもらいたい人がいるなら、その人と一緒に病院にいくことも大切です。
医師から的確な説明を受けることで、客観的に判断してもうことが可能です。その後は、「こういうことだから、少し休ませてほしい」と伝えてみましょう。
特に家族や恋人、一番の友達などは、人生に深く関わっている人です。医師の言葉だけでなく、自分自身の言葉で「つらい、がんばれない」と伝えることができれば最良です。言葉にすることがつらければ、紙などに書き出して見せるのも、気持ちを伝える手段になります。
周囲の方に伝えにくい場合は、公共の相談機関を利用してみてください。地域の保険センター、精神保険福祉センターなどで、相談窓口が開かれています。理解ある第三者に話すことで、少しずつ解決へ向かうこともあります。
うつ病は名前や存在が広く知られ始めたものの、まだまだ病気としての理解は広まっていないのが現状です。どんなに懇切丁寧に説明しても、医師の言葉を聞いても、うつ病のみならず、精神疾患そのものを理解できない方がいるのもまた事実です。
ですが、きちんと理解してくれている人も増えてきています。出会う人の全てに「理解してもらわなくては」「きちんと伝えなくては」と必死になる必要はありません。手を差し伸べてくれている人がいれば、その人の助けを借りることも大切です。
うつ病の治療法は近年になってずいぶん確立されてきましたが、周囲の方々が理解してくれるということは、何よりも症状改善への助けになります。

精神科や心療内科への受診をためらう方は少なくありません。これは、精神疾患自体が未だに一般的な理解を十分に得られていないためです。しかし、保険制度や国の補助対象の中に精神疾患を患っている方のためのものが増え始めたこともまた事実です。
うつ病は治療で治すことができます。投薬だけでなく集団カウンセリングや行動療法など、医療費という形での費用がかからない療法も数多く提案されています。自身の症状に合った治療法を選び、うつ病を治すためにもまずは心療内科やメンタルクリニックなどに足を運ぶことが大切です。