うつ基礎講座

中級 うつ病はなぜ起きる?

うつに関する読み物などではよく、「現代では、誰でもうつ病になる可能性がある」と書かれています。現代を生きるわたしたちとしては、「なぜうつ病が起きるのか」ということについてひとつでも多くのことを知っておきたいところです。

ストレスを知ろう

うつ病の大きな原因と考えられている「ストレス」。もとは物理学で使われていた言葉で、「何らかの刺激によって物が歪むこと」を表します。そこから転じて「心や身体に与えられる刺激や負荷」のことを指す言葉になりました。
ストレスにはいくつかの原因があります。ここではストレスの原因を大きく4つに分けてご紹介します。ご自身や周囲の方々に思い当たることがあれば、参考にしてみてください。

社会的ストレス
会社や学校など、個人が所属する場所での人間関係や、仕事や受験などに対するプレッシャー、周囲からかけられる期待など、主に対人関係から生じるストレスを社会的ストレスといいます。まじめで几帳面、責任感の強い方ほど社会的ストレスを感じやすく、自分の感じている社会的ストレスを全て1人でなんとかしようと頑張ってしまう傾向にあります。
同じ出来事でも、必ずしも周囲が自分と同じようにストレスを感じているというわけではありません。人によってストレスを感じやすい物や事柄は異なります。
ですから、「どうして自分だけがこんなに苦しんでいるんだろう」とは、あまり思い込まないことが大切です。「たまたま自分は今の状況が苦手なんだな」と自己評価することで、ぴったりなストレスケアの方法が見つかるはずです。社会的ストレスを少しでも軽減するために、ストレスを吐き出す手段を持ちましょう。
また、精神科で医師やカウンセラーに自分が抱えているストレスを話すことで、気持ちが楽になることもあります。
心理的ストレス
将来に対する漠然とした不安や仕事での挫折による自信の喪失など、自分自身の心や感情に由来するストレスを心理的ストレスといいます。また、親しい方との死別やパートナーとの離婚など、喪失体験からなかなか立ち直れない方も、心理的ストレスを感じることが多くあります。
怒りや悲しみといった自分自身の感情を抑制してしまうこともまた、心理的ストレスを感じさせる要因です。社会に出ると怒りや悲しみを率直に表せる機会はなかなかありません。しかし、感情を抑えこんでしまってばかりだと、身体は常に緊張した状態になります。それが原因で、肩こりや頭痛などの症状が出てきてしまうこともあります。ストレスは心にも身体にも、良いことは1つもありません。
心理的ストレスを溜めないためにも、自分の感情に素直になれる場所を作ることが大切です。
環境的ストレス
引っ越しや転勤、結婚や出産などで、身の回りに起こった変化が原因のストレスを環境的ストレスといいます。今まで送ってきた生活ががらりと変化してしまい、その変化に心がついていけなくなってしまったとき、人は環境に対してストレスを感じます。
環境的ストレスを感じる方は、「せっかくこんなにいいことがあったのに、不安に思うのはぜいたくだ」「自分はいま幸せな状態にあるはずだから、それに不安を感じたりするのはおかしい」という考え方をしてしまうことが少なくないそうです。しかし、急激な変化に対して戸惑いを覚えたり、ついていけないと感じることは当然ので、おかしいことではありません。
環境的ストレスには、自分に合わない生活環境から来るストレスもあります。長時間の通勤や通学、照明の明るさや使い慣れない道具での仕事など、環境的ストレスは思わぬところにひそんでいます。
自分自身を取り巻く環境を今一度見直して、環境的ストレスを少しずつ減らすことが大切です。
身体的ストレス
がんや脳卒中、心筋梗塞などの病気を抱えた方に発症しやすいのが身体的ストレスです。病気を抱えていることそのものがストレスの原因になったり、病気の治療のために使っている薬が脳に影響を及ぼしてしまい、普段以上にストレスを感じてしまうことがあります。元気がない、様子がおかしい、と思われても、病気だからと見過ごされがちなストレスです。また、運動不足も身体的ストレスになります。
仕事などで忙しい方も、定期的に軽い運動(ウォーキングや自宅の整理整頓など)を心がけることで、身体的ストレスを軽減させることができます。

豆知識~ストレスマグニチュードとは~

「ストレスマグニチュード」という言葉をご存知でしょうか。これはストレスを感じやすい出来事と、それに応じたおおよその点数から現在感じているストレスの度合いを知るためのものです。元はアメリカで作られたものですが、近年になって日本人用のものも作られました。
「ストレスマグニチュード」の中には「クリスマスなどの長期休暇」や「個人的な輝かしい成功」など、ストレスとは程遠そうな出来事もありますが、それらが生活にもたらす変化は決して小さくはありません。こういった出来事が6ヶ月以内にいくつあったかで、自分が抱えているストレスがどれほどのものかをおおまかに知ることができます。なんだか忙しい時間を過ごしているな、と感じたら、ご自身の「ストレスマグニチュード」を調べてみるのもいいかもしれません。

うつ病の原因はひとつじゃない?

ストレス以外にも、うつ病の原因として提唱されているものがあります。
ひとつは「モノアミン」です。モノアミンとは、アドレナリンやドーパミンなどの気分に関係する神経伝達物質です。上に挙げたアドレナリンなどは、聞いたことのある方もいるのではないでしょうか。
その昔、モノアミンが減ることでうつ病が起きるのだ、という説が提唱されました。当時はうつ病に関することはほとんどわかっておらず、この説は特に斬新なものとして受け入れられたそうです。しかし、モノアミン仮説は完璧ではなかったのです。
ここで新たに提唱されたのが、「モノアミン受容体説」です。受容体が注目されたのは、うつ症状の改善とともに受容体がゆるやかに現象していく、という結果が出たためです。モノアミンの受容体が増えるからうつ病が起きるのだ、という「モノアミン受容体説」がにわかにささやかれました。
しかし、モノアミン受容体説も完璧ではありませんでした。抗うつ剤の中には、モノアミン受容体を減らす作用のないものも存在します。その抗うつ剤ももちろん抗うつ作用が働きますので、これもうつ病の全てを説明できるわけではない、ということが認識され、仮説としては十分ではないという位置付けになりました。

うつ病の原因は様々です。いくつもの原因が複雑にからみあい、うつ病という病気を形づくっているのです。うつ病は、未だにその仕組や原因のすべてが理解されているわけではありません。様々な見地から疑問を持ち、研究を重ねていくことで、これからも少しずつうつ病について理解が進んでいくことになります。