うつ基礎講座

初級 うつ病の「身体」の症状

「身体」に現れる症状

うつ病を患ってしまうと、心と身体の両面に様々な症状が現れます。
うつ病における身体的症状では、睡眠障害、食欲不振や過食、重い倦怠感、頭痛などが典型例として挙げられます。こういった身体的症状は、気分の落ち込みや記憶力の低下など内面的な症状よりも自覚しやすく、医療機関を受診するきっかけになりやすいものです。
胃腸の状態が悪くて内科を受診したところ内臓には問題が見られず、原因が見つからなかったため念の為に精神科を受診したところうつ病が発覚した、というケースはめずらしくありません。
うつ病は精神疾患に含まれる病気ですが、身体が訴えるサインから気づくこともあるのです。

睡眠障害

睡眠障害は、うつ病における最も典型的な症例の1つです。ほとんどすべてのケースで、何らかの睡眠障害が認められています。
いずれの睡眠障害もうつ病に特有の症状というわけではありませんが、原因に心当たりがないのに睡眠障害に悩まされている場合には、うつ病であることが疑えます。
睡眠障害の症例には以下のようなものがあります。

中途覚醒
睡眠中、ちょっとしたことでもすぐに目が覚めてしまう睡眠障害です。連続した十分な睡眠時間を確保することが難しくなり、熟睡感が得られずに疲れが残ってしまったり、日中に強い眠気を覚えるようになって集中力の欠如を招きます。
入眠困難、不眠症
眠ろうとしても寝付きが悪くなり、なかなか入眠することができなくなる睡眠障害です。日本睡眠学会では、「寝付くのに普段より2時間以上かかることが週2回以上、1ヶ月の間継続し、不眠によって苦痛を感じる状態」を不眠症の定義としています。眠れなくなると気分をリセットすることも難しくなり、うつ病の症状を助長させてしまいます。
過剰睡眠、過眠症
不眠症とは逆に、どれだけ寝ても眠気が取れず、睡眠の満足感が得られなくなる睡眠障害です。決まった時間に起きられなくなったり、どうしても二度寝してしまって、頻繁に遅刻するようになったりします。また、十分な睡眠時間を取った後でも急激に強い眠気に襲われる、集中力を欠いた状態が続いたり実際に居眠りをしてしまうなど、仕事や学業にも支障をきたすようになります。

食欲不振・過食

食欲不振も、うつ病の典型的な症例の1つです。うつ病に悩まされている人の多くが、空腹を感じない、何を食べても美味しく感じられないなど、食欲が衰える症状を訴えています。食事をしなくなると、十分な栄養を補給することが難しくなり、身体の健康が著しく損なわれてしまいます。
一方で、全く反対の症状を示す人もいます。自分でも止められないほど食欲が増大し、過食に陥ってしまうケースです。このケースでは、限界を超えて食べ続けてしまうため、体重が急激に増加したり、消化器系に負担がかかって内臓系疾患を併発してしまう危険性があります。
うつ病のタイプからどちらの傾向になりやすいのか判断が可能で、典型的なうつ病のタイプであるメランコリー型では食欲不振、冬季うつや非定型うつでは過食になりやすいとされています。

倦怠感・疲労感

疲れていたり、気分が沈んでいるときには、身体もそれに引きずられるように重く、怠さを感じるようになります。
一過性の倦怠感や疲労感であれば、気分が回復するにつれて復調します。十分な休息をとることで、回復を早めることもできるでしょう。
しかし、うつ病の方の場合、十分な休息をとっても倦怠感や疲労感が晴れることがありません。この点が一過性の倦怠感・疲労感と大きく異なる点です。どれだけ休んでも身体の調子が戻らないときには、うつ病が疑えます。
また、うつ病による倦怠感・疲労感は、時間帯によって症状の度合いが大きく変化する点も特徴です。これを日内変動といいます。一般的に、うつ病の症状は朝に最も症状が重くなり、昼過ぎから夕方にかけて改善される傾向があるのです。
そのため、朝起きた直後の調子が最も悪く、時間が経過するごとに少しずつ調子が戻ってくるという場合には、うつ病の可能性を疑ってみましょう。

血行障害(痛み、しびれ、めまい)

塩野義製薬株式会社と日本イーライリリー株式会社によるうつ病治療のプロジェクトチーム「うつの痛み情報センター」の調査によると、うつ病を患っている方の約6割の人が「うつ病による身体の痛み」を経験しています。
痛みを感じる部位には個人差がありますが、頭痛、肩凝りによる疼痛、胃痛がトップ3となっています。そのほかにも、関節の痛み、内臓の痛み、腰の痛みなど、うつ病によって痛みを訴える人は多いことがわかっています。
原因には諸説ありますが、うつ病を患うと自律神経が失調し血行障害が起きやすくなるため、それに伴って酸素不足が起きているためだと考えられています。また、血行障害によって手足など末端部にしびれが起こったり、めまいが誘発されることもあります。
こうした症状は疲労や一過性の体調不良など様々な要因で引き起こされるため、直接的にうつと結びつけることは難しいといえます。
しかし、具体的な原因に心当たりがないのに継続的にこうした痛みに悩まされており、睡眠障害や食欲不振、倦怠感、疲労感などの症状を併発している場合には、うつ病であることが疑えます。

運動機能の障害

うつ病を患っている方には、運動機能の低下が見られる場合があります。これは運動能力が落ちるというよりも、動作が鈍くなってゆっくりとしか動けなくなったり、口数が減り発声が不明瞭になる症状として現れます。身体自体に問題があるわけではなく、精神的な疲労や倦怠感が身体を縛り付け、十分な運動ができなくなってしまうのです。
また、これとは逆に落ち着きがなくなり、過剰に運動せずにいられなくなる障害が生じる場合もあります。焦燥感に衝き動かされて必要なく歩きまわったり、早口で喋り続けてしまうなどの症例は、落ち着きがないだけでいたって健康であるように見られやすく、うつ病と判断されにくいという特徴があります。そのため、第三者によってうつ病が発覚する機会が少ないという危険性があります。
いずれも、自分の身体の動きを思うようにコントロールできなくなる障害です。こういった症状に自覚がある場合にはまずうつ病を疑い、医療機関を受診することが大切です。