うつ基礎講座

初級 うつ病とは?

うつ病とは?

うつ病とは、心を健康に保つためのエネルギーが不足してしまう病気のことです。普段であれば落ち込んでもすぐに立ち直れるところが、うつ病になると立ち直るためのエネルギーが足りずに、ずっと落ち込んだまま、塞ぎこんだままになってしまいます。
人の感情や心理を司っているのは、脳です。何らかの原因で脳の働きが弱まってしまって心のバランスが崩れたままになってしまっていると捉えれば、うつ病についての理解が容易になるといえます。
また、「病は気から」という言葉もあるように、身体の調子と心の調子は深い部分でリンクしています。憂うつな気分が続くと、食欲や睡眠欲、性欲といった基本的な欲求も減少してしまい、身体の怠さが抜けなくなったり、頭痛や発熱などの身体症状として現れることもあります。

「甘えているだけではないのか」「心の弱さが原因ではないのか」と誤解されることの多いうつ病ですが、それはガソリンの入っていない車に対して走れというのと同じことであるともいえます。エネルギーがなければどれだけアクセルを踏んでも前に走ることはできません。それでも無理にエンジンを回そうとすれば、車は故障してしまうでしょう。それと同じといえます。
物事の捉え方次第で症状が軽くなったり重くなったりするわけではありません。身体の機能の一部が不調を訴えている状態、つまり「病気」であるということを、本人はもちろん周囲の人もしっかりと理解しておくことが大切です。

うつ病の症状と診断

  • 突然悲しくなる、意気消沈してしまう。
  • 何事にも興味や関心が持てなくなる。
  • 食欲不振、または過食の傾向が強くなる。
  • 睡眠障害、またはすぐに目が覚めてしまう。
  • 落ち着きがなくなる。
  • 疲れやすくなる。
  • 自分を責めてしまう。
  • 集中力がなくなり、決断ができなくなってしまう。
  • 死ぬことを考えたり、実行しようとしてしまう。

これは、うつ病を患った人に見られる症状を平たく表現したものです。
うつ病の診断基準として用いられているDSM(精神障害の診断と統計のマニュアル)でも、この9つの項目を診断の材料としています。
これらの症状のうち5つ以上が、毎日、またほとんどすべての行動に伴い、それが2週間以上継続した場合にうつ病であると診断されます。

平成23年度の厚生労働省調査によると、精神疾患によって医療機関を受診した人の数は、全国でおよそ320万人(当年度の調査では、宮城県と福島県の一部地域を除外しています)。
そのうち、およそ3分の1にあたる95万人が「うつ病」と診断されています。
ですが、これはあくまでも医療機関を受診してうつ病と診断された人の数です。
日本を対象として行われた世界精神保健調査では、うつ病経験者の約7割強が医療機関での受診を受けておらず、この数字を基にした場合、うつ病を患っている人の数は300万人近くになると考えられています。

うつ病の原因

うつ病の原因は、まだはっきりと解明されているわけではありません。脳の働きが鈍くなってしまってセロトニンやノルアドレナリンなどの神経伝達物質が上手く分泌されなくなるからだという説や、副腎皮質からコルチゾールが過剰に分泌されてしまうためという説がありますが、厳密な定義はされていません。
なぜそのような状況に陥ってしまうのかについても、完全に解明されているわけではありません。ですが一般的には、ストレスや環境の変化、病気など、様々な要因が複雑に絡み合って発症すると考えられています。
その要因は「環境要因」と「身体的要因」に分けて考えられ、個別のケースで原因を特定する際の指標ともなっています。

何が原因でうつ病になってしまったのか。疑わしい原因を特定することは、うつ病の治療においてとても大切なことです。症状を緩和して改善に向かうためには、原因となるものを遠ざけたり、回避することが重要であるためです。原因を特定すれば解決方法も明確になり、治療に向けてのモチベーションにつながります。

うつ病の治療

うつ病の治療は、「休養」「投薬治療」「カウンセリング」を経過観察しながら組み合わせて行います。
他の病気とはやや事情が異なる特殊なものとイメージされがちですが、症状に合わせて適切な治療を行えば改善することができるという点に変わりはありません。
身体が傷ついたらゆっくり休養して傷を癒やすように、心のエネルギーを充填するためにはたっぷり休養することが大切です。生活環境がストレスの原因である場合には、環境をがらりと変えてみるのも良い方法です。
また、風邪を治すために風邪薬を飲むように、投薬治療で身体の治癒能力を高めることもうつ病の改善に効果的です。弱まってしまった脳の働きを取り戻し、神経伝達物質の分泌を正常化させる抗うつ剤も、うつ病を克服するにあたって強い味方になってくれます。
脳の不調によって感情や心理をコントロールすることが難しくなっているうつ病の方は、どうしても主観的に物事を考えてしまいがちです。カウンセリングを通じて自分を客観的に見つめられる土台作りが進めば、否定的になりがちな思考パターンの改善が見込めます。

うつ病の治療では、心だけでなく身体だけでもなく、その2つに向けた丁寧な治療が求められます。
できるだけ早期に治療を開始することが望まれており、そのためには心や身体が発するサインを逃さずキャッチすることが大切です。

うつ病を理解する

現代において、多くの人が悩み苦しんでいるうつ病ですが、社会的な認識は未だに不十分であり、それゆえ「知られざる病気」であるといえます。
うつ病に対する誤解が、うつ病に悩み苦しんでいる人をさらに追い詰める状況を作ってしまっています。
また同時に、うつ病に悩んでいる本人でさえ、うつ病がどういった病気であるのかについて誤解していたり気がついていないことも多くあります。

自分はこんなに苦しんでいるのにどうして周りの人は理解してくれないのだろう、と悩んでいるあなた。
悩んだり苦しんでいる人を前にして何をすれば良いのかわからないという方は、まずはこれまで漠然と受け止めていた「うつ病について」のイメージを捨てて、正しくうつ病を理解するところから始めることが大切であるといえます。