うつ治療のいま

うつ病診断の検査法

うつの早期発見のカギとなる新しい検査法

厚生労働省が実施している患者調査によれば、日本の気分障害患者数は2008年現在104.1万人とされていますが、未受診患者を含めると全うつ病患者は400万人に達すると言われています。また、日本には年間3万超の自殺者がおり、そのうち少なくとも1万人がうつ病患者で、残りの2万人の中にも相当数のうつ病患者が含まれると考えられています。

うつ病は専門医が診断基準に照らして問診を行い診断をします。現在の日本では世界的な診断基準であるDSM-IVと、それらが開発される以前まで日本で使われてきた従来型分類・診断との両方が併用されています。
詳しくはこちらで紹介しています。ぜひご覧ください。
→うつ病の診断基準
この問診で問題になるのが、患者やその家族が必ずしも正確な情報を医師に伝えるとは限らないということえす。また、うつ病の症状が出る他の病気も多く、その診断は経験を積んだ専門医であっても難しい場合があります。
一方で、うつ病は早期発見、早期治療が有効な病気でもあるので、健康診断や、調子が悪いなと感じたらすぐにかかる内科医やかかりつけ医の段階でうつ病の診断ができることが望ましいのです。
そういった期待に応える形で登場したのが、近赤外線を頭皮に当てて脳内の血流量を測定する光トポグラフィーと、血中のエタノールアミンリン酸(EAP)の数値をバイオマーカーとしてうつ病を診断する2つの最新検査方法です。
光トポグラフィーについては、こちらで詳しく紹介したのでご覧ください。
最新うつ治療
今回はうつ病バイオマーカーについてご紹介します。

うつ病バイオマーカー「エタノールアミンリン酸(EAP)」

バイオマーカーとは、人の身体の状態を客観的に測定し評価するための指標で、観察、診断、治療に用いられます。具体的には、血液や尿、あるいは身体の組織の中に含まれる物質で、身体の状態を知るうえで定量的な指標(マーカー)となるものです。肝臓の機能を調べる際のGOT(グルタミン酸オキザロ酢酸トランスアミナーゼ)やGPT(グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ)、糖尿病の血糖値などがバイオマーカーとして広く知られています。

こうした指標をうつ病においても見い出す研究が2002年頃より進められ、2015年にはようやく実用化が視野に入ってきたそうです。
うつ病にかかると免疫力が落ちるため、血液にも何らかの影響が出ているはずという仮説から、考えうる血液中の成分をひとつ一つ調べてゆき、最終的に、「エタノールアミンリン酸(EAP)」の数値により、うつ病の発症を特定できることがわかりました。
現在のところ、適応障害、健常者、パニック障害とうつ病を区別することは、約9割可能ということです。
また、うつ病が重症であるほどこの数値は低く、回復するほどに増えて、健常者と同じ数値になった症例もあり、うつ病の有無だけなく、重症度とも関係している可能性があるとのことです。
現在は、厚生労働省の倫理指針に従い臨床が進められています。うつ病のバイオマーカーとして正式に認められれば、精神科の受診をためらう人でも、内科で検査を行うことが可能となります。また、健康診断でも発見することができ、うつ病の早期発見、早期治療が大幅に進むと予想されます。
治療の効果も数値化されるため、投薬を適切に行うことができ、治療期間を短くする効果も期待できるといいます。

うつ治療の行き詰まりを解消する存在

「エタノールアミンリン酸(EAP)」はまだ臨床段階ですが、2019年を目処に保険収載を目指しています。光トポグラフィーについては、2014年に健康保険の診療対象となり、導入する医療機関も増えつつあります。こうした客観的にうつ病を診断する検査方法が多くの人に利用され、さらに研究が進めば、うつ病治療のさらなる進歩が期待できます。

長い間治療を続けているが、一向によくならない、病院に行ってうつ病と診断されたが、セカンドオピニオンが欲しい、人が信じられないので、客観的データで見たい…。そんな方々は、これら最新の検査方法を受けられる医療機関に問合せをしてみてください(「エタノールアミンリン酸(EAP)」は臨床として検査が受けられる医療機関があります)。うつ病治療での行き詰まりやわだかまりを解消するための味方となってくれるのではないでしょうか。