うつ治療のいま

最新うつ治療

多様化するうつ治療

20世紀後半以降、日本でのうつ治療は薬物療法が中心でした。しかし、薬物量療法は大きな治療効果が期待できる反面、副作用によるリスクもあるため、近年はその補助や代替として、さまざまな療法が研究され行われています。
薬物量法と平行して行われることが多いのがカウンセリングを主体とした心理療法です。治療効果がカウンセラーの力量で左右さることが多いことが難点ですが、薬物量法に継いでポピュラーな治療法です。また、同じ心理学的アプローチとして、ストレスの原因となる感情をコントロールすることを目的に行われる認知行動療法も近年は高い効果を挙げており、メジャーなうつ治療として存在感を増しています。
一方で、最新医療機器による身体的なアプローチや、新たな検査方法なども開発されつつあり、何をしても治らなかった重度のうつ病患者にも一筋の光明が見え始めています。なかでも治験段階が終わり、実際の治療現場で実績を残し始めている注目の検査法・治療法2つを以下にご紹介します。

光トポグラフィー検査

身体に害のない近赤外光を頭皮に当て、前頭葉や側頭葉でどのように血流が増加するかを測定し、うつ病に特有な血流パターンに照らして、うつ病であるか、うつ病であるならどんなタイプのうつ病かを診断しようとするものです。
これまで、うつ病の診断は医師による問診だけに頼ってきましたが、客観的なデータに基づいた診断を加えることで、診断精度のアップが期待されています。2009年に厚生労働省から精神疾患の診断と治療に役立つ臨床検査として承認され、以後、臨床現場で実用化されています。

検査時間は約15分。
患者は頭に光源と光検出機を内臓したヘッドセットをつけ、「あ・い・う・え・お」と発話を繰り返した後、「あで始まる言葉は?」などの質問に答えます。
人間は考えて言葉を発するときに血流量が変動するので、以下のような典型パターンに照らして診断します。

 ・健常者・・・・・・・・速やかに血流量が上昇、高い値をキープ
 ・うつ病・・・・・・・・血液量の上昇がほとんど見られない
 ・双極性うつ病・・・・・ゆっくり上昇
 ・統合失調症・・・・・・不規則な上昇と下降が見られる

光トポグラフィーによる診断結果と問診による診断結果の一致率は7~8割程度とも言われており、かなりの精度を期待できます。
また、うつ病と診断されていても、この検査を通して双極性うつ病であることがわかるなど、それまでの治療方法を見直すきっかけにもなっているようです。

磁気刺激治療法

磁気刺激療法(TMS)とは、8字型の電磁石によって生み出される急激な磁場の変化を利用し、頭の外側から脳に直接刺激を与え、脳の活動を回復させる治療です。
19世紀から行われてきた通電療法も、脳に電気刺激を与えるという点では同じですが、治療直後にひどい頭痛や一時的な記憶障害などがおこるなど、患者の身体への負担が大きいことがネックでした。その点、磁気刺激療法は前頭葉部分というきわめて限られた部分にだけ効率的に刺激を与えることができ、電流も非常に弱く、副作用がほとんどないのが大きな特徴です。

なぜ、症状が回復するのかは解明されていませんが、施術後に脳の血流量が増えることはわかっており、うつ病によって低下した脳内の血流や代謝があがって回復につながるのではと考えられています。

実際の治療は、治療機器の種類にもよりますが、おおむね、額のやや上部にコイルの入った治療器をあて、約10分間磁気を流します。コイルを当てている部分は指ではじかれているような感覚があるそうです。

磁気刺激療法はアメリカ発の治療方法で、日本の厚生労働省にあたるアメリカ食品医薬品局(FDA)から、2008年に認可を得ています。日本では2012年にNHKの特集番組で放送されたのをきっかけに注目が高まりましたが、まだ保険治療としては認可されておらず、治療は保険適用外となります。
また、うつ病治療のほかに、脳卒中の後遺症である片麻痺や高次脳機能障害、失語、パーキンソン病、難治性疼痛、片頭痛、難治性てんかんなどの神経疾患の治療にも活用されており、注目を集めています。

新宿ストレスクリニック