甲状腺ホルモンがうつ病の原因になる場合も

うつ病を知る

仕事もプライベートも順風満帆で、家族やご近所に恵まれて毎日がとっても幸せ! そんないかにもストレスフリーで充実した生活を送っていれば、うつ病とは無縁でいられるのでしょうか? うつ病の原因はストレスだから、と思い込んでいれば、精神的な問題を抱えてさえいなければ安心だと考えてしまうのも無理はありません。ですが、実はストレス以外にもうつ病の発症原因とされているものがあります。そのうちの一つが甲状腺ホルモンです。

ストレスフリーでもうつ病になる? 甲状腺ホルモンという伏兵

「減りすぎても増えすぎてもいけない」 甲状腺ホルモンの正体とは 

甲状腺とは人間の首、のどぼとけの辺りにある内分泌器官です。甲状腺からは、全身の細胞の代謝を助けて働きを活発にする甲状腺ホルモンや、カルシウムを沈着させてしっかりした骨を作るためのカルシトニンというホルモンが分泌されています。このうち、うつ病と関連しているのは甲状腺ホルモンの方です。

甲状腺ホルモンには、細胞の代謝を促す作用があります。そのため、甲状腺ホルモンが減ってしまうと細胞が代謝されにくくなり、肉体疲労が回復されず倦怠感に悩まされたり、神経伝達物質の一種であるセロトニンの分泌バランスが崩れ精神的に不安定になります。これを、「甲状腺機能低下症」と言います。

逆に、甲状腺ホルモンが過剰に分泌されることでも身体に異変が生じます。必要以上に行われる代謝が、本来であれば身体を動かすためのエネルギーまで使い切ってしまい、極度の疲労や体重の著しい減少などを引き起こしてしまうのです。これを「甲状腺機能亢進症」といいます。

まるでうつ病みたい? 甲状腺機能低下症

倦怠感や精神的不安定をもたらす甲状腺機能低下症。この症状、別の「ある病気」に似ていると思いませんか? そう、「うつ病」の症状にそっくりなのです。

便秘、発汗量の減少、過食症を併発する可能性があることもうつ病との類似点です。どちらの病気もセロトニンの分泌異常が関わっており、甲状腺機能低下症とうつ病には深い関わりがあることがわかります。実際に、甲状腺の機能低下が原因でうつ病になることもあります。

ではまったく同じかといえば、実はそうともいえないのがややこしいところ。関連性の次は、違いについてご紹介しましょう。

うつ病と甲状腺機能低下症の違いとは

大きな違いは、発症に至る経緯です。うつ病は主にストレスから発症すると考えられていますが、甲状腺機能低下症では主に慢性甲状腺炎(橋本病)などの病気、遺伝、ヨード欠乏が挙げられます。またバセドウ病の治療過程で現れることもありますが、いずれにしても精神的な負担、ストレスが原因となることはありません。そのため、ストレスフリーな環境で過ごしているのにうつ病を発症してしまった、という場合には、うつ病ではなく甲状腺機能低下症が疑えます。

しかし、甲状腺機能低下症自体があまり知られていないためうつ病と誤解してしまったり、単なる疲れのせいだと軽く見られてしまいがちです。実は、医療現場においても、甲状腺機能低下症とうつ病の関連性や詳細な違いについて、まだあまり知られていないのです。甲状腺ホルモンと抑うつ症状の関連性、甲状腺機能低下症とうつ病の違いを理解している医師であれば、甲状腺疾患を専門としている医療機関への転院を勧めてくれます。甲状腺機能低下症は不足している甲状腺ホルモンを供給することで改善でき、専門の医療機関で治療を受ければ完治させることは難しくありません。

まとめ

甲状腺機能低下症は、うつ病と似た症状が起きる、専門家でさえ間違えてしまうことの多い病気ですが、「もしかして……」という気づきがあれば比較的容易に治療できる病気です。「知ること」こそが、この病気に対する最大の武器になります。うつ病というメジャーな病気の陰に隠れた、甲状腺ホルモンという伏兵の罠にご注意ください。

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