実は性格の問題じゃなかった! 気分変調症を知る

うつ病を知る

精神疾患に対する理解は、近年になってかなり広まってきました。特にうつ病への理解は広まり、うつ病に対する助成制度や治療のための補助金といった保障が整いつつあります。しかし、精神疾患の中には新しく発見され、世間に認知されていないものもあります。たとえば非定型うつ病や気分変調症などといった精神疾患は未だに差別や偏見の対象となり、病気で苦しむ方々をさらに苦しめ、治療を遅らせる原因の一つとなってしまいます。今回は、まだあまり知られていない精神疾患の一つである気分変調症についてお話します。

ネガティブな思考、暗い気分が何年も続いている人は確認が必要

悲観的、マイナス思考、欠如感を感じていますか?

人には千差万別の性格がありますね。楽天的であったりせっかちといった性格は、みんなそれぞれの個性です。その性格の中で「よくない」として考えられがちなのが「悲観的」「マイナス思考」など、自分に自信が持てずにいる人たちによくみられる性格です。悲観的やマイナス思考といった性格も一つの個性ですが、そういった性格による軽度の抑うつ状態(意欲の低下や罪悪感など)が何年にも渡って続いている場合は、気分変調症の疑いがあります。

気分変調症を発症しやすい方は、なんらかの要因でもともとの自尊心が低いことが多く、小さな失敗やささいなできごと出来事でも自分を責めてしまいがちです。気分変調症の方がよく訴える考え方を挙げてみましょう。自身だけでなく周囲の方にこんな考え方の方がいれば、もしかすると気分変調症を患っているかもしれません。

  • 他の人は苦しいことや辛いことにも耐えているのに、それができない自分は弱い人間だ
  • 自分は何をしても上手にこなすことができない
  • 他人に本当の自分の性格を知られたら、きっと嫌われる
  • 自分が何かをしたいと主張するのはわがままで、そんなことはとてもできない
  • 自分の主張で波風が立つくらいなら、何も言わず我慢するほうがずっといい
  • 自分の人生はこれまでもこれからも苦しいことばかりで、いいことはひとつもないだろう
  • 自分の人生が上手くいかないのは、全て自分がきちんと生きてこなかったせいだ
  • 自分は人間としてどこか欠陥があり、できそこないだ
  • これからの人生に希望が持てない

健康な心を持った方から見ると、いかにも「考えすぎ」な項目ばかりですが、気分変調症を患っている方はこういった考え方で世界にフィルターをかけてしまい、自分自身に罪悪感と自責の念を背負わせてしまうのです。

思春期と気分変調症

気分変調症を発症する時期は人それぞれですが、一番見逃されやすいのが思春期に発症するものです。10代前半から始まる思春期は何事にも感じやすく、ささいなことで落ち込んだり喜んだりしながら大人になる経験を積む時期とされています。そんな思春期に発症した気分変調症は、周囲から見れば「多感な年頃の子供が思い悩んでいる」のとなんら変わらないのです。気分変調症を患った方の中には「物心ついた頃からいつも暗い気持ちでいた」という方もいらっしゃいます。幼い頃から抱えてきた気分変調症の根は深く、ちょっとやそっとでは改善へ向かいません。

気分変調症は治らないの?

これまでの話だと、気分変調症は不治の病のように見えますが、そんなことはありません。気分変調症も精神疾患の一つとして研究され、治療法もあります。抗うつ剤での治療を行う場合もありますが、もっとも多く行われているのは「認知療法」という、対話による療法です。

認知療法とは、患者さんの抱いている認知の歪み(日常生活に支障が出るほどの、理不尽で合理的でない考え方)を対話により少しずつ解きほぐし、患者さんが自己主張をするためのトレーニングや、患者さん自身が自分の心の動きを知るために用いられます。

気分変調症の患者さんは自分に否定的になるあまり、自分に訪れる変化に対してとても敏感です。考え方を変えろと言われるたび萎縮し、ますます自分を否定してしまいます。そこでまず、認知療法によって患者さんが感じている「不安」を引き出します。吐き出した不安を共感をもって聞いてあげることにより、萎縮して縮こまった心の視線を少しずつ上に上げてゆきます。こうしたカウンセラーによる認知療法を根気よく、長期的に続けていくことによって、気分変調症は改善へ向かいます。

まとめ

気分変調症は特別な病気かと思われがちですが、この病気を一生涯で患ってしまうのは人口の約6%とされ、確率としては16~17人に1人の割合です。やや乱暴な例え話になりますが、電車1両につき160人が乗っている満員電車の中には、気分変調症を患っている方が10人もいるということになります。そう考えると、花粉症や風邪と同じように気分変調症もありふれた病気だといえるでしょう。

気分変調症の患者さんの多くが「自分の性格が変だから、うまくいかない」「自分は人より劣っているから何事も上手にこなせない」と考え、パーソナリティ障害であると自己診断をしてしまっています。「自分が変だから」ではなく「自分は気分変調症という病気で、その症状ゆえに上手くいかない」という考え方を少しずつ理解していくことが、気分変調症の治療を行う上でとても大切なポイントです。

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