よく似ているけど実は違う、うつ病と適応障害

うつ病を知る

うつ病は広く世間に知られ始めましたが、それ以外の精神疾患については未だ理解が得られているとは言いがたい状態にあります。うつという言葉がひとり歩きしている傾向もあり、うつ病と他の精神疾患、例えば適応障害を誤認してしまうことが、医療現場においてもしばしばあります。それほどまでにうつ病に似ている適応障害とは、どのような病気なのでしょうか。

 

適応障害はうつ病を含む様々な疾患の前兆でもある

うつ病と似ている“症状”と大きく違う“行動面”

適応障害とは、情緒面、行動面の症状で、社会的機能がいちじるしく阻害されている状態のことを指します。ある生活の変化がその人にとって重大なストレス源となり、日常生活や対人関係に大きな支障が出るほどの不安感、心配などの症状が出ている場合はすべて適応障害だと言えるでしょう。意欲の低下や食欲不振、倦怠感といったうつ病と同じような症状が見られますが、行動面の症状は大きく違います。

適応障害にみられる行動面の症状は、抑うつ状態が原因の不安や焦り、怒りによって気持ちが不安定になり、声を荒らげて怒り出したり突然泣き出したりというものが多いです。またアルコールへの強い依存や意味のない虚偽の発言、行き過ぎた攻撃性もみられます。これらはうつ病にはない症状ですが、周囲からはストレスから性格が変わってしまったと誤解され、自分がうつ病だと思い込む方もいらっしゃいます。

適応障害の場合、自分の性格の変容や行動面の症状から起きた事態に対して罪悪感を持たないことも多く、無気力で自責の念が発生するうつ病とはこちらも大きく違います。10代から20代の青年期に適応障害になると、歳相応の規範を大きく乱した行為障害があり、幼児期の子供の適応障害では夜尿症や指しゃぶりといった赤ちゃん返りが起こります。

そして適応障害とうつ病の最大の違いは、抑うつ状態の持続性です。うつ病はストレスの原因から離れても抑うつ状態が続きますが、適応障害の場合、ストレスの原因から距離を置くと抑うつ状態が緩和され、趣味を楽しむ余裕が出てきます。

 

適応障害が悪化して引き起こされる病気

適応障害とうつ病は大きく違うということをお話しましたが、適応障害が悪化するとうつ病へ移行してしまうことがあります。最初に適応障害だと診断されても、抑うつ状態が2週間以上続くことでうつ病だと再診断されることもあり、適応障害はうつ病予備軍とも言えるのです。また、適応障害から摂食障害に発展したケースも少なくありません。人によって拒食症にも過食症にもなり、これは情緒が安定しない気分障害が影響しているとされています。不眠や過眠といった睡眠障害を引き起こすこともあり、適応障害は様々な病気の前兆を示している場合があります。

 

適応障害の治療は認知療法を中心に

適応障害の治療方法はいくつかありますが、まずはストレスの原因を取り除くことに努めます。理不尽な暴言を浴びせる上司から離れるための部署異動や転職、DVをする恋人から距離を置くために専用のシェルターへ入居するなど、悪化させないためにストレスを根本から断ちます。

ストレスの原因から離れられた後や、ストレスの原因を断つことが困難である場合は「本人の適応力を高める」という方法にシフトします。カウンセリングや認知療法が主に治療法として使われます。認知療法とは、本人が抱いている認知の歪み(日常生活に影響を及ぼすほど理不尽で合理的でない考え方)を、カウンセラーとの対話によって少しずつ矯正していくもので、うつ病と同じく長い時間をかけることが必要になります。「この状況から一生逃げられない」「何をしたって無駄」といった認知の歪みを時間をかけて矯正し、本人が環境に適応する能力を向上させます。カウンセリングや認知療法は、何よりも本人が積極的に取り組むことが重要です。

投薬で対処できる症状がある場合は、薬によって治療を進めることもあります。不眠や抑うつ状態などに対処する薬は存在しますが、適応障害においてはあくまでも対症療法(表面的な症状の緩和や改善のための療法)にしかなりません。カウンセリングや認知療法によって初めて根本的な治療が可能になるのです。

 

まとめ

適応障害とうつ病の違いについてお話しました。大きな違いとして抑うつ症状の持続性、怒りや焦りによる不安定な精神があります。また、抑うつ症状に苛立って過剰に攻撃的になることも、適応障害の特徴です。不安定な精神から双極性うつ病(躁うつ病)だと誤解されることもありますが、自分の行動に対して自責の念や罪悪感を感じることが少ないのが適応障害と躁うつ病の違いです。

適応障害の治療を行う場合は、うつ病のように抗うつ剤を使用することはあまりありません。カウンセリングや認知療法といった対話による療法を行い、本人の意識を少しずつ変えていくことでストレスに対する適応力を高めるのです。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

関連記事

おすすめ記事