うつ病の発症に関係する4つの仮説

うつ病を知る

脳の機能が低下することがうつ病の原因であることは確かだといわれていますが、詳しい全容はいまだに解明されていません。

さまざまな仮説が唱えられ、それらを証明するための研究が進んでいます。どの仮説もそれだけではうつ病のメカニズムを説明するにはいたらないのです。今回は、うつ病のメカニズムを解明するカギとなる重要な仮説について紹介します。

 

うつ病の考え方の基本「モノアミン仮説」

人間の脳というものは無数の神経細胞から作られています。神経細胞と神経細胞の間にはすき間があるので、情報を伝えるために「情報伝達物質」という化学物質が放出されます。

情報伝達物質にはさまざまあるのですが、アミノ基をひとつだけもつ構造をした情報伝達物質の総称を「モノアミン」とよびます。モノアミンには、ドーパミン・セロトニン・ノルアドレナリンなど、人間の気分に関係するものが含まれていて、うつ病に大きく関係していると考えられているのが「モノアミン仮説」です。モノアミン仮説では、特にドーパミン・セロトニン・ノルアドレナリンが不足することでうつ病が発症すると考えられています。

うつ病に使用されている主な薬は、このモノアミン仮説に基づいて開発されました。しかし、抗うつ剤を飲み始めてから効果が出るまでに一般的に2~3週間程度かかるのが一般的です。モノアミンの不足は服用によって補われたはずなのに、症状が軽減するのに時間差が生じてしまう矛盾の説明がうまくいきません。

したがって、現代ではモノアミン仮説のみでうつ病をすべて説明するのは難しいという意見が一般的です。モノアミン仮説だけでうつ病のメカニズムをすべて説明することはできませんが、この仮説によって抗うつ剤の開発が進みました。うつ病の基本となる仮説であったことには違いなく、うつ病においては重要な仮説のひとつといえます。

 

今後、証明が必要「BDNF仮説」

モノアミン仮説に矛盾が生じたあと、「モノアミン受容体仮説」が提唱されました。

治療薬の効果でるまでの時間差の矛盾について説明をしようと試みましたが、これもまた矛盾の生じる仮説となったのです。そして生まれた有力な仮説が「BDNF仮説」です。BDNFとはBrain Derived Neurotrophic Factorの頭文字で、「脳由来神経栄養因子」と訳されています。神経を成長させたり、発達させたりするために必要な栄養因子のことです。

このBDNFが不足することで、うつ病が発症するという考え方が「BDNF仮説」になります。栄養が不足するので、神経が成長したり、発達したりできずに、その結果、モノアミンも不足するという考え方なのです。

モノアミン仮説で矛盾した治療薬とのタイムラグも、BDNF仮説では矛盾がありません。抗うつ剤を服用することで、モノアミンが増え、モノアミンが増えるとBDNFの産生増加につながります。モノアミンが増加からBDNFの産生増加にいたるまでには数週間が必要といわれていて、抗うつ剤の効果がでるまでの期間と一致するのです。

現代でもこの仮説を証明するためにさまざまな研究が行われています。

 

過剰なストレスでうつ病を発症「神経損傷仮説」

うつの原因としてストレスがよく取り上げられる傾向です。

しかしストレスがどのように体に作用をしてうつ病を発症するかについては完全には明確にされていません。そのひとつの説としてあるのが「神経損傷仮説」です。

人間はストレスを感じると脳からホルモンが分泌され、最終的に副腎皮質を刺激しコルチゾールやノルアドレナリンといったホルモンを分泌します。なかでもコルチゾールはストレスホルモンともよばれ、ストレスを受けたときに非常に大切な役目を果たします。血圧をあげたり血糖をあげたり、免疫や炎症を抑えたりするのです。そうすることで人間はストレスに耐えることができるようにもできています。

しかし血圧をあげたり、血糖をあげたりといった作用は一過性だから耐えられることでストレスがかかり続けると、高血圧、高血糖、免疫力の低下をまねきかねません。通常は、そのようなことが起こらないように互いにホルモンが拮抗して働くようにできているのですが、過剰なストレスによって、そのバランスが崩れ、コルチゾールが増加すると、脳神経を破壊するといわれています。

脳神経が破壊されることで、BDNFの不足やモノアミンの不足を招き、その結果うつ病を発症するのではないかというのが「神経損傷仮説」なのです。

 

性格もうつ病に関係する「病前性格説」

病前性格説とは、自身の性格が関係してうつ病になるのではないかという考え方です。

モノの見方は人間の性格によって大きく変わるものです。楽天的に捉えることができる人がいれば、悲観的な人もいて、慎重派や大胆派など人の性格はさまざまといます。その中で、うつ病になりやすい病前性格の代表が「メランコリー親和型人格」や「執着気質」といわれています。

メランコリー親和型人格とは、ドイツの心理学者が提唱したもので、几帳面で勤勉、責任感が強いのが特徴です。人とぶつかることを嫌い必要以上に他人に合わせる傾向があります。執着気質は日本人の心理学者が提唱したものですが、メランコリー親和型人格によく似ています。几帳面で熱中すると冷めにくいので、のめり込むところが特徴です。正義感が強く、仕事にも熱心に取り組み、他人からは一目置かれる存在であることが多いといいます。

メランコリー親和型人格と執着気質のどちらにしても、責任感が強く、仕事熱心であるといえます。世間的には「真面目」とされる性格ですが、何事も程度が重要です。ひとりで責任を抱え込んだり、自分を犠牲にしたりしてまで仕事を重要視するのは体にとってはよくありません。結果、大きなストレスを感じてしまうことになります。

 

うつ病の発症にはさまざまな仮説が複雑に絡み合っている?

うつ病の原因にはさまざまな仮説が提唱されていて、完全に解明するまでにはいたっていません。

しかしなんらかの原因で脳の機能に低下が起こることは確かで、それによりモノアミン(ドーパミン・セロトニン・ノルアドレナリン)が不足することが気分の沈みに関係しています(モノアミン仮説)。

他にも、BDNFという脳由来の神経栄養因子が不足していたり(BDNF仮説)、ストレスによってホルモンのバランスが崩れて脳神経が損傷したり(神経損傷仮説)、几帳面で責任感の強い性格(病前性仮説)もうつ病の発症に関係しているとされています。以上のように、さまざまな仮説が複雑に絡み合って、うつ病を発症すると考えられているのです。--www.pakutaso.com-shared-img-thumb-N189_boudesasu

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