磁気刺激療法(TMS)で脳の機能にスイッチオン!

うつ病の治療

磁気の力を利用したうつ病治療をご存知ですか? これまで一般的なうつ病治療は、抗うつ薬を服用しながら心身を十分にリラックスさせることでした。しかし、このような従来の治療法の効果は、ゆっくりとしか現れません。はっきりとした回復が目に見えるわけではないので、患者の方やご家族が焦ってしまうことがあります。うつ病治療に焦りは禁物です。気持ちが焦ると、間違った結論を導きだす恐れがあります。これを取り払ってくれるのが、即効性の高い磁気による治療、「磁気刺激療法(Transcranial magnetic stimulation)」です。今回はこの磁気刺激療法のメカニズムと、うつ病へのさまざまなメリットをご紹介します。

不快感が少なく、即効性が期待できる新しいうつ病治療法

脳の働きスイッチ

脳が発する指令に従って、身体は動作します。指令は「生体電流」という微弱な電流として、神経を通じて伝達されます。この生体電流が乱れると、思ったように動作ができなかったり、身体の器官が正常に働かなくなってしまいます。また、神経伝達物質の分泌にも、この生体電流が大きく関わっていることが明らかになっています。

うつ病は心の状態に症状が出る病気である以前に、脳の病気です。うつ病を患うきっかけは人によってさまざまですが、原因は脳の機能の著しい低下にあります。スイッチとなる電流が流れないと、神経伝達物質はずっとオフになったままです。脳は心と身体の司令塔であるため、脳がストップしたままだと心と身体はまったく動けません。そのまま放置していると、深刻なうつ病を引き起こしてしまいます。

磁気刺激療法ってなに?

前述した脳のメカニズムを利用したものが、磁気刺激療法です。磁気刺激療法は頭の外から磁気刺激を与える治療法で、脳の中に磁場を出現させて人為的な電流を作ります。電流を流すことでオフになったままの神経伝達物質が刺激され、いつもどおり正常に働き始めるのです。うつ病の脳内では、“幸せホルモン”であるセロトニン、“やる気ホルモン”であるノルアドレナリンが著しく減少しています。セロトニン神経系とノルアドレナリン神経系を磁気で刺激すると、神経伝達物質の働きが活発化し、脳に抗うつ作用をもたらすことができるのです。

うつ病を発症している脳は、血流量の低下や代謝が衰えていることも特徴です。そのため、脳の唯一のエネルギー源であるブドウ糖が運ばれず、脳は栄養補給ができなくなります。また、体内に取り入れた酸素の25%は脳で消費されています。そのため酸素やブドウ糖を運ぶ血流が止まってしまうと、脳は動けません。磁気刺激療法は、脳の淀んでいたサイクルをクリーンアップして栄養を運ぶ効果もあるのです。

磁気パワーのメリット

今までのうつ病治療に使われていた抗うつ薬には、さまざまな副作用がありました。たとえば、不眠・眠気、血圧の変化、頭痛、食欲不振、情緒不安定、手足のけいれんなどです。抗うつ薬の効果は現れるまでに時間がかかることが多く、副作用ばかりが気になって本人やご家族が「うつ病が悪化しているのでは」と心配になってしまうこともありました。しかし、脳のメカニズムに働きかける磁気刺激療法は、そういった副作用の心配がなく効果がすぐに現れることが特徴です。

ほかの脳のメカニズムに基づいた治療法には、「電気けいれん療法」があります。脳に電気を流すことで、うつ病治療において極めて高い効果が期待できます。しかし、治療のときには全身麻酔が必要となることもあり、他のうつ病治療と比べてハードルは高くなります。また、自分の脳に強い電流が流れることが怖いと感じる方が多く、選ばれることが少ない治療法です。対して磁気刺激療法は磁気のパワーにより脳内に微弱な電流を作り出す治療法であるため、電気けいれん療法と比べて安全性は高く、簡単に行えるメリットがあります。

まとめ

私たちの心と身体のアクションを決める脳は神経ホルモンの分泌により健全に機能していますが、うつ病のときにはこの機能がうまく働きません。それをうまく働かせるスイッチになるものが電流であり、磁気刺激療法です。磁気刺激療法は、脳のメカニズムを利用した新しいうつ病治療なのです。

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