自傷行為に隠された、うつ病患者からのSOS

うつ病に寄り添う

自傷行為は、端からみれば自殺願望の表れ、もしくは患者が自暴自棄になっているという受け取り方をしてしまいがちです。しかし、自傷行為が意味するのは自殺願望でも自暴自棄でもなく、患者本人が精神的苦痛から逃れるために取る行動であったり、または「誰かに気づいてほしい」「助けてほしい」といったSOSのサインであったりします。この自傷行為について正しく理解することで、患者に歩み寄り、自傷行為に走るのを防ぐことができます。ここでは、うつ病患者が行う自傷行為と、それに対する対応について解説します。

一見危険な自傷行為は、自分自身を守るための行動

うつ病患者が自傷行為に及ぶ原因

手首を刃物で傷つける、タバコの火を押し付ける、指や唇を強く噛むなど、自傷行為は一見すると危険な行為に映ります。しかし、叱って無理に止めさせようとすると、患者は外部へのSOSの手段やストレスからの逃げ道を失ってしまいます。叱る前に、患者が何を思って自傷行為に走るのかを突き止めることが大切です。

自傷行為に走る患者は、自己主張が苦手で他人に相談することができない傾向にあります。それだけに、何か悩みを抱えていても「迷惑がかかるから」と言い出せず、自分だけで悩んでしまうケースも少なくありません。その我慢が限界に達すると、自傷行為という形で他人にSOSのサインを送るという行動にでます。

また、患者が「痛みを感じることでしか、自分が生きていることを実感できない」「自分自身に強い怒りを覚えるあまり、結果として自分を傷つけてしまう」と考えている場合もあります。これらの考えは、うつ病を始めとする精神疾患によってあらわれる「離人状態」(自分が自分でないように感じる症状)によって引き起こされると言われています。この離人状態に恐怖を感じたとき、自傷行為に走ると考えられているのです。実際、自傷行為をすることでこの離人状態が少し改善する、と話す患者も少なくないようです。

鎮痛物質と自傷行為は、どんな関係なのか

人の身体が傷つくと、β-エンドルフィンやエンケファリンと呼ばれる鎮痛物質が分泌されます。このβ-エンドルフィンとエンケファリンには鎮痛作用のほか、快感を引き起こす作用もあります。この作用によって精神的な苦痛が和らいで快感を覚えるようになるので、自傷行為に依存してしまう患者も少なくありません。

自傷行為は、精神的な苦痛を身体的苦痛に置き換えることで鎮痛物質を分泌させ、ストレスから逃れようとする防衛本能だとも考えられています。したがって、自傷行為は患者なりに逃げ道を考えた結果だと考えられます。周囲の人は、まずその点を理解する必要があります。

自傷行為に気づいたら、どうするべきか

家族や友人の自傷行為に気づいたら、まずは歩み寄ることが大切です。自傷行為は確かに危険な行為ですが、ここできつく叱ったり、問い詰めたりするのは逆効果です。前述したように、自傷行為は患者が出せる精一杯のSOSのサインです。これを無理にやめさせるのは、患者が辛さを訴えるための手段を奪うのと同じです。

まずは「何か困っていることがあるのか」というように声をかけることが大切です。悩みを聴く際も、探ったり問い詰めたりするのではなく、相手が話しやすい環境を整えるようにしましょう。「どうして自傷行為をするのか」という原因を、できるだけ相手のペースに合わせて聞き出す必要があります。また、患者に自傷行為以外のストレスのはけ口を用意することも効果的です。例としては、軽い運動やカラオケなどが挙げられます。ウォーキングなどの運動は、精神を安定させる伝達物質セロトニンの分泌を促します。カラオケで大声を出すことは、脳に十分な酸素を送って自律神経を整え、ストレスを緩和する効果が期待できます。

なお、自傷行為によって負った傷が深かったり、自傷行為が悪化していく一方である場合は、すぐに救急車を呼んだり、入院させるという措置を取る必要があります。

まとめ

自傷行為を見つけたら、無理にでもやめさせようと考えてしまいがちです。しかし、その自傷行為は患者なりの自己防衛であったり、ストレスのはけ口であったりするのです。その点を理解し、歩み寄って対策を取ることが大切です。

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