自分を傷つける手をぎゅっと握ってあげる

プロフィール
S.K 30代・女性
仕事のストレスからうつ病を発症。診療内科、精神科への通院を始めるが、医師との信頼関係が築けず通院治療を断念。発症の引き金になった仕事を退職後、ひきこもりになりかけるも、周囲の理解と支えを得て自己回復。
お困りごと
止められない自傷行為

 

自分の爪で自分を傷つけることが止められない・・・

私がうつ病を発症した時、最初はそれと気付くことが出来ませんでした。というよりも、認めたくなかったという言葉が正しいかも知れません。自分はまだやれる、やらなければならない、と、強く思っていたからです。
だからこそ逃げ道を作るために、文字通り自分に爪を立てたのです。
私の手が届く場所には引っ掻き傷や、抉れたような爪痕が目立ちました。けれど、痛みは沢山の悩みを覆い隠してくれました。そうして、痛みで自分を騙して生きていました。

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食い込む爪の痛みで、上司の叱咤をやり過ごす毎日

その頃の私は、今までやりたかった仕事に就き、期待に胸を膨らませていました。未経験の内容ながら、やる気と元気だけは誰にも負けまいと、ものすごくから回った勢いを持っていました。
これまでの人生においては、そんな感じで何となくうまくやっていくことが出来ていたので、今回もきっとうまくいく……と思い込むようにしていました。無意識のうちに生まれる不安や焦りは見て見ぬ振りをしました。

会社では毎日のように
「大丈夫、頑張れ」「まだまだこれからだ、諦めたら駄目だ」
そう叱咤され続けました。

やがて、仕事にノルマが発生し始めました。
本来あるとは聞いていなかった大きな重圧が生まれたことで、私の精神状態は一気に崩れます。緊張や焦りから今まで出来ていたことも満足に出来なくなり、同僚とのコミュニケーションさえろくにとれない様に……。

そんな毎日を繰り返したある日、いつも通り上司に叱咤されている時、ふとお腹の前で重ねた手に爪が食い込んでいることに気づきました。
痛い。
けれど、そう思うと上司の声が少し小さくなった様な気がしたんです。
「これはいいっ!!」
そう思ってからは、どんどん傷が増えていきました。

傷をつける理由を自分以外の誰かが知ること

毎日が、自傷行為への罪悪感と仕事へのプレッシャーとの戦いでした。
痛みがあれば気を紛らわせられる、けれどそれがいけないことだとはわかっている。葛藤の中で、結局は自傷行為を選んでしまう。その繰り返しの中でもう自分では自傷行為をやめることは出来ないと、自暴自棄になっていました。

大好きな親にさえ、自分が苦しんでいることを打ち明けられませんでした。
隠していた傷をとうとう母が見てしまった時の表情は、いまだに忘れることが出来ません。
その日、私と母は初めてその時の仕事と自分の状況を話しました。

毎日追いつめられていたこと、毎日自分を奮い立たせていたこと、毎日浴びせられる叱咤をかわすために自分を傷つけ、その痛みで気を紛らわしたこと。

母は、私の手を握って一緒に泣いてくれました。
私の心は何か大きなおもりを下ろしたように楽になりました。

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激しい感情を落ち着かせることが出来るのは温かさ

なぜ自分の身体に傷を付けるのか。その問いには、沢山の答えがあると思います。

「自分が嫌いだから」
「痛みが癖になっているから」
「誰かに心配されたいから」
「死にたいから」

どんな理由にしろ、その人はたぶん凍えています。
何でもいい、あったかい言葉を掛けてください。
何も言葉が見つからなかったら、その人の手を握ってください。

何かをしてあげるんじゃない、何もしなくてもいい。
自分を傷付けている利き手をぎゅっと握って、震えを高ぶりを止めてあげてください。
その繰り返しでも、必ず変化はあります。

自傷行為が減ったなら万々歳、触れられることを嫌がったなら、本人に意思があることを喜んで、今度は掛ける言葉を探しましょう。
本人は、「自分は誰にも認めてもらえない」と決めつけていることが多いのです。
「大丈夫」「もうそれをしなくてもいいんだよ」
今のその人を受け入れて、その上でその人がしていることが今は不要なことなのだと伝えてみるのもひとつの方法だと思います。
語気を荒げずに、ゆっくり穏やかに伝えてみてください。
私はそうされて、とても心が落ち着きました。

何かの拍子に自傷行為への衝動が湧く時は、両手を握り締めて、その言葉を言われた時の口調で繰り返し自分に呟きました。

「私は大丈夫」
「もう自分を傷つける必要はなくなったんだ」
そうして徐々に自傷行為は減っていったのです。

うつから立ち直るには長い年月が必要と言われています。本人はもちろん、まずは周りが焦らないことです。
考え付くことをゆっくり、少しずつ。

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