自己暗示をかけ、本に集中して視線を忘れる

プロフィール
楓 20代 女性
看護師として勤めている際に、強すぎる仕事への責任感と上司からのパワハラが引き金でうつ病発症。休職と退職を経て本格的に治療に取り組み、3年後に別の病院で職場復帰を果たす。現在も気分の波はあるが自分でコントロールできるようになった。
お困りごと
電車内の視線

きっかけは上司の監視

看護師として勤めていた病院でのことです。上司は私が患者さんの元にいるとドアの陰からいつもこっそりと監視していました。ただ単に技術チェックのためだったのかもしれませんが、氷のような視線に気づいたときは動けなくなりそうでした。同期は5人いたのですが常に私だけを監視し、あら捜しを続けていたのです。そのうちに上司がいないときでも、どこかで見ているのではないかと常に不安に思うようになりました。

いつも見られているような気がする……

そんな監視行為が続いていくうちに上司の視線だけでなく周囲からの視線にも敏感になっていきました。誰もいないのに見られているような気がして気分が安らぐ時がありませんでした。特に気になったのが閉鎖的な空間である電車内です。私は電車通勤だったので毎朝視線を感じながらの出勤でした。そんな中、自分なりに対処法を考えていくつか試したことがあります。
始発の電車に乗るため時間は変えようがないのですが、座る位置を毎日変えてみました。しかし気休め程度で何も変わりませんでした。続いて電車内での過ごし方について考えました。「仕事のことを考えるから変な視線も感じるのでは?」と思い通勤中に仕事の書類を読むのを止め、勉強するのも止めました。これは休職するまでの間では一番効果がありました。しかし、まさに休職することが決まったその日に私は大きな恐怖を味わうことになったのです。

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心が凍る電車内での恐怖体験

私は身体的にも精神的にもボロボロになってしまい、心療内科で診断書を出してもらいました。その診断書をもらった手で職場に向かい、震える体を必死に奮い立たせ上司に診断書を見せました。その途端、上司は私を責めたてました。「こんなナースがいたら私の立場がなくなる」と言い放ち役立たずの烙印を押されました。診断書のおかげで休職が認められることになりましたが、安堵する間もなく病棟から逃げるように立ち去りました。

電車に乗ってやっと一息つきかけたとき、私は遂に幻覚を見てしまいました。車内にいる全員が私のことを見ていました。見られている気がするレベルではありません。はっきりと私のことを見ていました。心臓が凍り付きそうなほどの恐怖に襲われどうすることもできませんでした。なぜだかその時、皆の視線の中に「あの子はうつ病」「仕事を放り出してずる休みする悪いヤツ」という言葉が込められているように感じられました。今考えるとそんなことある訳ないと思えるのですが、当時は心の余裕をなくしていたので感じたことを全て現実として受け止めてしまっていました。

幻覚は心の中を映し出したもの

休職を経て退職した後は主に通院時に電車を利用していました。あの一件があって以来、電車に乗るたびに視線が気になり、ときに幻覚を見ることがありました。主治医にも相談をしましたが、具体的なアドバイスはもらえなかったので自分で解決法を考えていくうちに自己暗示にたどり着きました。
「全員がこちらを見ることなんてある訳がない」こんな言葉を自分自身にかけ続けました。すると自分の中で幻覚を作り出していたことに気づきました。しかし、すぐに視線が消えることはなかったため、今度は本の世界に入って外界をシャットアウトすることにしました。元々、読書が好きだったので色んなジャンルの本を買いあさり家でも電車の中でもむさぼるように読み続けました。電車に持ち込むのは続きの気になる特にお気に入りの一冊です。
最初こそ本の内容なんて頭に入りませんでしたが、次第に到着駅まで視線を感じることなく過ごすことができるようになりました。あるとき、たまたま違うバッグで出かけたので本を入れ忘れていたことがありました。席に座ってからしまったと思いましたが、何事もなく到着駅に着くことができました。あの忌まわしい視線を感じることがなくなっていたのです。

私は自己暗示によって「幻覚による視線は心の中の感情によって引き起こされたもの」であるということに気付きました。ここに気付くことができたのは非常に大きかったと思います。後は心の中の思い込みの感情を他に向けるだけです。それを助けてくれたのは本でした。本の世界に入ってしまうことで余計な感情をなくし、徐々にその状態に心を慣らしていきました。心が慣れてしまえば作業は完了。そして、幻覚に襲われた日から一年が経過したころようやく私は堂々と電車に乗ることができるようになりました。

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