福祉施設+近隣住民の地域ネットワークで支える

プロフィール
T・S 30代 男性
自分自身も軽いうつ病を経験。福祉関係の仕事柄、色々な高齢者と関わることがあり、責任ある仕事をしなければならないという使命感が強すぎたのが原因のもよう。今は改善して看護師を目指して努力の日々。
お困りごと
老夫婦宅のゴミ屋敷化

脳梗塞後の夫を支えていた妻がうつ病に。老夫婦に訪れた危機

高齢者世帯で最も多いのが高齢者夫婦のみで生活をしている世帯ですが、実際に通常の暮らしが出来ている世帯は半分程度になります。なぜなら、どちらかの高齢者夫婦には必ず持病があり通院しているからなのです。
もちろん通院しているわけですから、どこか体調が優れず家事なども疎かになってしまいます。一般家庭でも妻が体調悪い時は夫が家事などをする必要があるのと同じで、高齢者夫婦も妻が病気の際は夫がそのフォローをします。しかし、高齢者夫婦世帯で実際に円滑に家庭生活が営まれているかは疑問です。私はそれらの現状をケアマネージャーという立場で実際に見てきましたし、どちらかが体調を崩した場合、結局は施設などに入らざるを得ない結果に陥るパターンがかなり多いのです。

数年前、私がケアマネージャーとして担当をしていた高齢者夫婦世帯では、夫が脳梗塞の後遺症があり、自分のことをするのが精一杯で、妻はそんな夫に対してストレスを抱えている内にうつ病を発症してしまった事例があります。それまでは全く地域住民や福祉のサービスと関わることが一切なく妻が自分で頑張って支えてきたのです。

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「私達には全く関係ない、帰って」衝撃の初対面

私がこの高齢者夫婦と関わることになったのは、市町村が委託して管轄している「地域包括支援センター」のA氏から電話があり、「困っているケースがあって、私が話をしても解決できない」という相談をもらった時点からでした。
地域包括支援センターの業務は、管轄している市町村の高齢者の困難ケースや介護予防事業を柱として行っている事業です。もちろん無料で相談が可能なのですが、今回の話を頂いた時は、正直、地域包括支援センターの職員が解決出来ないのに私が解決できるはずないだろうと思っていたのです。ただ、依頼を受けたからにはケアマネージャーとして最後まで引き受けようと意気揚々と高齢者夫婦の自宅へ行ったのです。

自宅へ行くと、すでに玄関先から匂う何ともいえない異臭があり、ドキドキしながら居間へ行くと、足の踏み場もないようなゴミ屋敷。テレビでは見たことはありましたが、ここまでとは非常に驚いたのを今も覚えています。
座る場所を確保し、妻と夫にそれぞれ今困っていることを聞きました。すると、夫は「部屋がゴミだらけで掃除してほしい、妻がうつ病になる前はきれいな自宅だったのに。俺はこんな体だから何にも出来ない」と。その言葉からは助けを求める気持ちが非常に強く感じられました。でも一方のうつ病の妻は、「私達には福祉サービスなんていりません、帰ってください」と拒絶反応を見せたのです。驚いた私は、新たな作戦を考えるために、その日は数分話をしただけでひとまず帰りました。

キーパーソンは妻と確信をする

事務所に戻った私は、地域包括支援センターのA氏に連絡を取り、その日見知った現状を話しました。
ポイントは3つありました。1つ目は妻がうつ病で全く家事などのやる気が無くなってしまったこと。2つ目として夫は、現状をどうにかしてほしいと訴えが強かったこと。3つ目はゴミ屋敷をきれいにしないと、衛生上も悪く何かの感染を起こす可能性があったこと。これらを解決するためのキーパーソンはやはりうつ病の妻だと、地域包括支援センターのA氏と意見が合ったのです。

そこから、妻に病院を受診してもらうことから始めてみようと私は考え、再度夫婦の自宅を訪問したのでした。

全ての環境を見直すことから始めてみよう

高齢者夫婦の自宅へ訪問した私は、正直にありのままの話をしました。「奥さんのうつ病の治療から始めて、旦那さんもきちんと脳梗塞の薬をもらえるように円滑に通院できる環境を整えましょう。そして、衛生的に非常に悪いゴミをきれいに皆で片付けましょう」。
私が切実に話をしたのがよかったのか、妻は涙を流して苦しかった現状を話しだしました。「自分が頑張らないと夫も病気があるし……いろいろなことを悩み過ぎて病気になった。苦しかった」。

実は、これが高齢者夫婦に起こりやすい現実です。辛いことですが、娘や息子と関係が悪く頼る人がいない家庭によくありがちなことなのです。

地域の福祉事業所、地域住民が一体となってサポート

今回の件は困難事例として扱われ、地域包括支援センターのA氏の呼び掛けで、最終的な福祉サービスを提供するのに必要なサービスは何かを検討する会議が行われました。
まずは、最大の問題であるゴミの問題から議題に上がりました。訪問介護のサービスで掃除をする解決に至ったのですが、全てをきれいにしてしまうのは、うつ病の妻のプライドや精神状態も逆に悪化させてしまう危険性も考慮し、妻が病院へ行った後の経過を見ながら、うつ病が緩和してきたと同時に、ヘルパーと一緒にゴミを片付けることで決まりました。ゴミ問題の話はまとめで話しますが、結果的に他のサービスについては、夫の通院時にはヘルパーが付き添うことで解決し、調理等の栄養部分もヘルパーと妻が一緒に料理をすることで解決しました。そして、体調管理をするといった部分で訪問看護のサービスが入ったのです。

最終的に、妻は受診をして服薬治療のおかげでうつ病もよい方向に向かいました。問題のゴミの掃除は、妻のうつ病の改善と共にへルパーの日程を調整して、大々的にゴミ処分掃除が行われました。その日は、私も手伝いに行きましたし、なんと地域包括支援センターのA氏と同僚の職員や、訪問看護の職員、近隣の住民までもが手伝いに来てくれたのです。
その日から、妻はもちろん夫にも笑顔が戻り、地域住民との関係もよくなり、地域住民の方が私より夫婦のことを心配してくれるまでになってくれたのです。

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地域包括支援センターは覚えておきたい味方

このことをきっかけに、高齢者が抱えている問題は沢山あるものだと私自身改めて認識し直しました。
各市町村には必ず、無料で相談ができる地域包括支援センターという機関があります。そこには、保健師やケアマネージャー、社会福祉士が在籍しており、どんな問題にも対応してくれます。

私は改めて、地域包括支援センターや地域住民とのネットワークを作っていくことが、うつ病患者の支えにもなっていると感じました。

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