励ますのではなく抱えている痛みや悲しみを周囲が受容する

プロフィール
T・S 30代 男性
自分自身も軽いうつ病を経験。福祉関係の仕事柄、色々な高齢者と関わることがあり、責任ある仕事をしなければならないという使命感が強すぎたのが原因のもよう。今は改善して看護師を目指して努力の日々。
お困りごと
通院拒否

 

うつ病だと認めず病院にも行かない友人の対応に悩む

私が以前勤務していた会社での話です。私は大学卒業後、長年福祉の仕事に携わってきました。新卒で福祉関係の会社に入社した私には気を使わないとても優秀な同期のAがおり、Aはみるみる出世して施設長まで昇りつめ、毎日仕事に追われる忙しい日々を送っていました。逆に私はといいますと、ゆっくりと仕事をこなすタイプで、それが上司に評価され主任まで昇格することができました。

ある日、久しぶりにAと食事にいった時です。同期とはいえ職場が違う私たちは会うことはあまりないので、痩せこけたAの変化に驚いてしまったのです。

Fotolia_71884122_Subscription_XL

「休職しようと思う」。友人が出したうつ病のサインを見逃す

今考えるとそれがうつ病発症のサインだったのかも知れません。「最近どう?」と聞くとAはこう答えました。「会社休職しようと思う、部下からの突き上げが激しいし、上司からのプレッシャーも相当きつい」。私は、「体重も急激に落ちただろ? 顔色も悪いし会社に理由を説明して休職しろよ」。Aは「うん。我慢してたけどもう限界」。その日、Aと久しぶりに会って盛り上がるはずが、会話をしたのはこれきりでした。

次の日、会社へ出勤すると辞令が届いておりその内容に愕然としました。
「辞令~Aの施設長を解く Aを介護職とする」。
驚いた私は仲が良い人事部Bに事情を聞きました。Aは人事部にきちんと説明したようですが、会社側がすでに様子が変だったAの限界を感じ、水面下で降格人事案を練っていたようです。

Aは休職と引き換えに、体面も役職も失ったのです。私はあの時Aの話にきちんと耳を傾けるべきだったととても後悔ました。

退職後に尋ねた友人宅がゴミ屋敷に・・・

プライドがあるAは、結局、介護職に降格するならと辞表を提出し退職しました。その後
半年間程音信不通だったAとようやく連絡が取れ、Aの自宅へ行った時には驚きました。まるでゴミ屋敷。いたる所に食べ物のカスが散乱しており、今までのAの生活では考えられないくらいに、本人も環境も変化してしまったのです。
「病院行った?」と尋ねると、Aは「え? 何の病院?」と聞き返してきました。恐らくAは自分の病気がうつ病と認めたくはなかったのでしょう。それはなぜか? 自分が高齢者のうつ病や精神病の方と多く関わってきたからです。

うつ病の浮き沈みが顕著に表れる

2カ月くらいの間、なぜか距離をおいていた私に、一通の電話がありました。Aでした。「やっと就職できたよ」という内容に、私もその場は一緒になって喜びましたが、反面「病気は完治したのだろうか?」と思いながら電話を切りました。

一週間後、Aから連絡があり「だめだわ、俺今の職場向いてないわ。仕事辞めてきた」と言うのです。私は、冷静に「Aが自分に合いそうだと思う所に就職しなよ。慌てることないさ」と言うことは出来ても、「病院へ行こう。」とは言えなかったのです。Aの家族もきっと病院を勧めていると勝手に思ったからです。そして、その一言でAと関係が壊れるのも嫌でした。後で分かったことなのですが、結局今までの間、Aはうつ病とは向き合わず仕事に急かされる様、就職、退職を繰り返していたのです。

2カ月が経ち、Aとは連絡がないまま忙しく過ごしていました。ある日、Bから「Aの噂聞いた? 就職先に採用されても直ぐに辞めて迷惑かけているらしいぞ」と。同期の中でも優秀だったAが、会社に迷惑をかけて転職を繰り返している。私はその時決めました。きちんとAと向き合おうと。

Fotolia_74175834_Subscription_XXL

早期の対応が肝心だと痛感

高齢福祉に携わっている私にとって、体調の変化などは早期に対応するのを徹底しています。その私が、後悔しても悔やみきれなかったのが今回のAの話です。結局私はAに対してきちんと向き合うことをせず、うつ病が進みAの生活環境全てが乱れてしまいました。
早期に病院へ行くことを勧めていれば、Aもこれほど苦しむことはなかったですし、就職先の会社にも迷惑がかかることがなかったと感じます。

その後のAはといいますと、あれから私と一緒に病院へ行き服薬治療を行い、1年弱かかりましたが病気を克服したのです。
そこに至るまではちょっと大変でした。最初は「病院へ行こう」と懸命に説得しても全く話を聞いてくれませんでした。さすがにその時ばかりは私も悩みました。私の結論として、Aが思っていること、辛いこと、嬉しいこと、好きなこと、嫌いなこと、全てを受け入れAのペースで関わることにしたのです。するとAの表情も和らぎ、ようやく病院へ行くのを納得してくれたのです。

本人がうつ病を認めたがらないときほど、早期の対応、そして本人の状態をいいところも悪いところも含めすべて認めて受け入れるという周囲のサポートが必要なのだと思います。

 

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

おすすめ記事